双極性障害 虎の巻

双極性障害を患った人間が綴る、双極性障害完治への過程や双極性障害とは何かを綴る闘病記

回復期(中期)の症状とどのように過ごしていたか(1)再びうつへの入り口

さて、前回まで回復期の前期の症状と、どのような経過を辿ったかについて綴ってきました。

今回はその続きです。

回復期前半の躁うつの波


おさらいしますと、

急性期を休職して過ごすものの、会社員が決定的に向いていないことが分かり、会社を退職する決意を固めて意を決して会社に退職しに行ったら、その直後ストレスでうつ状態に逆戻り。体感的に体調が2か月前に戻ってしまった感じだったけれど、知人に仕事を頼まれて1週間だけということで引き受けた。その仕事中も鬱もあり、でも病気になる前の私のように仕事で来た時間帯もあり収穫もあった。その後、仕事の刺激で躁に転じてしまい、家事や運動をしすぎている状態になってしまっていた。

というのが前回までの回復期(前期)でした。

今回から回復期(中期)編です。

 

 

 

躁になっていっていると気づかずに、ただ毎日調子いいな~と思っていた私は、のんきに過ごしていました。

「今はやりたいことは何でもできるし、体も動くし、ストレスもないし、運動もしてるから尚更調子いいはず。絶好調!」

というのが、当時の私の感覚です。

 

しかし、その日々もそう長くは続きません。

躁の後には、必ず鬱がきます。

 

この年は梅雨が長くて、梅雨が明けたと思ったら夏の暑さが急にきて、と思ったらもうお盆過ぎには少し涼しくなって、みたいな年でした。

なので、夏の暑さに慣れる前にもう次の季節がやってきてしまった感じだったんですね。

 

そういう季節の変動が激しいと、普通の人でも体に堪えるのですから、私たち双極症患者は普通の人より自律神経が弱いので余計です。

体がついていかないんですね。

 

 

そう、梅雨の間はよかったんです。

ずっと同じ調子でいれましたから。でも暑くなると途端に調子が狂いだします。

この頃から、徐々に躁状態も崩れ始めます。

 

 

梅雨が明け暑さが急に来た頃、なんとなく調子が下降気味のような?という感じがし始めました。

暑さで食欲が落ちていました。胃痛も復活しました。

寝苦しく、睡眠不足も感じていました。

でも、当時は夏バテかな、くらいにしか思っていませんでした。なにせ調子がいいと信じ切っていたので。

いや、実際当初は夏バテだったのだと思います。それが結果的に自律神経を狂わせて、体調までも狂わせていったのです。

 

 

暑さがまず最初で、そのあと食欲の低下、更に胃痛。そこに寝苦しさから来る不眠が重なって、そうこうしていたらまたあのふわふわ・フラフラする感覚がやってきました。

次第に頭痛が強くなってきて、薬を飲まないといられないほどに頭痛が酷くなってしまいました。

 

頭痛が復活したことで、いよいよ気分も落ち込んできます。

それまではずっと調子がいいと思っていたのが、なんとなく下降気味だな~と自覚し始めます。

イライラするようになったり、頭痛のせいで寝ている時間も長くなりました。

以前のようになってきている自覚はあったものの、それを認めたくない自分がいました。

 

 

私は調子がいい。

以前より体調もずっと良くなっている。

治療の効果が出ているからだ。

薬が効いているからだ。

最近は家事もできるし、運動もしている。

お医者さんに言われたことはきちんと守っている。

薬もきちんと飲んでいるし、間違ったことはしていないはず。

じゃあなんで調子が悪いの?

夏バテのせいで狂ったの?

 

そんなことを考え始めました。

 

 

そんな感じで、調子が狂いだしたことを自覚してはいるものの対策が取れずに、どうにかしてまた浮上させないと、と思っていたところ、家族の些細な一言で、私の感情が爆発してしまいます。

当人には悪気はなく、おそらくそんなことで爆発するとも思っていなかったんでしょうが、こちらは気分が下降していたので、タイミング悪く引き金を引いてしまったということなのでしょう。

ついに、気分の波が正常範囲から逸脱し始めます。

 

「病気になった私が悪いのか」

「私は家族の厄介者なのか」

「私の性格のせいで病気になったの?」

「じゃあどうすればよかったの?」

「どうしていたら病気にならずに済んだの?」

「なんで私なの?」

「早く治したいのに」

「治したいと強く思っているのは私なのに」

「何で治らないの?」

「私の努力が足りないの?」

「日記もつけて運動もしている」

「こんなに努力しているのにまだ足りないの?」

「何がいけないの?」

「私がいけないの?」

 

もう無限ループです。

 

こうなるといよいよ本人も自覚します。

あぁ、鬱に近づいているんだなぁ、と。

 

 

ですが、うつ状態がどれだけ辛いかも知っているわけで、その状態に逆戻りするのも嫌なわけです。

それに、せっかく調子よくなっていたのにまた悪くなるということは、治療の効果が出ていないということになってしまいます。

それが嫌だったのです。

 

治療の成果が出ているから調子が良くなってきているのだと今まで信じていたのに、ここでまた鬱になってしまうと、治療は上手くいっていないということになってしまう。私がやるべきことをやっていないから、もっと努力していればよかったのに、今のままじゃきっと努力が足りないから、また悪くなってしまったんだ、私の努力不足。

つまり、『劣等生』になってしまう。

 

そんな恐怖がありました。

それだけは避けたかった私は、また『努力して』どうにかこの状態から浮上できないか?と考え始めます。

 

 

「きっと、努力が足りないからだ。運動が足りないんだ。もっと調子が悪くても言い訳せずにやればいいんだ。だって運動すれば気分が良くなるし、余計なことも考えずに済むって先生言ってた。」

そう思って、多少調子が悪くても無理にでも起きて運動してみました。

→ 運動している間は気分が少し良くなるものの、そのあと疲れ切って寝てしまいました。

 

 

あとは、ひたすら精神論です。

「自分は甘えているんだ。もっと努力しなきゃいけないんだ。努力すればきっと鬱に引っ張りこまれずに済むんだ。今が踏ん張り時なんだ。

きっと今頑張ればこれ以上鬱が酷くならずに済むはずなんだ。だから何でも思いついたことはやるんだ。寝てばかりいちゃダメだ。運動でもなんでもやるんだ。体にいいと聞いたことは全部やらなくちゃ。」

 

日本人の悪い癖ですね。

精神論で乗り越えられるなら、そもそも病気になんかなっていません。

第一、すでに鬱に足突っ込んでいる状態からいくら踏ん張ってみてもダメです。

もうすでに始まっているんですから、その状態で何かやってもどうすることもできません。

もし対策を取るならもっと初期の、夏バテかな?って思った時に始めていなければダメでした。

いや、夏バテを感じてからではもう遅かったかもしれません。梅雨が明ける時点で、猛暑への対策を考えていなければいけなかったのでしょう。

そのくらい鬱は防ぐのが難しいものです。

 

 

直後の診察でも、同じことを話していました。精神論です。

「自分が甘えているからダメなんだ。今までもやった気になっていたけれど、最近調子が少し悪くなっているのは努力が足りないんです。もっと努力してこの状態を乗り越えたいんです。きっとできるはずなんです。」

そんなことを話していたのを覚えています。

 

 

 

しかし、そんな気持ちとは裏腹に、状態は悪化する一方です。

それまではまだ、朝は起きられていましたが、いよいよ朝も起きられなくなってきます。

昼間も何もしたくありません。

自室で寝ている時間が長くなってきました。

色んなことを考えるのが面倒になってきます。

ただ寝ているのが楽になってきます。

出掛けるのが億劫になってきます。

出掛けても疲れてしまいます。

起きて掃除をしてもすぐ疲れてしまいます。

一日の中で夜が一番調子がいいです。

風邪をひきます。

 

 

こうなってくるともう自力ではどうにもできませんでした。

精神論も通用しません。

起き上がっていることが出来ない状態にまでなってしまったら、もう努力云々ではどうすることもできませんでした。

 

 

こうして私は、再びうつ状態に突入していきました。

しかし、今回の鬱はそれまでとは全く異なったものでした。そして人生で一番辛い鬱でした。

そんな辛い鬱が来るとは知らない私は、ただ「また鬱か」と思っていました。

 

 

 

さて、次回はいよいよ人生最悪の鬱期に突入していく経過を辿ろうと思います。

かなりヘビーな内容になってくると思いますが、これを書かないわけにはいかないので意を決して書こうと思います。