今日は、双極性障害で医師から処方される薬についてお話ししたいと思います。
まず、双極性障害は、うつ病とは全く違う脳の病気で、飲む薬も別物と話しました。
同じうつ状態だからと言って、うつ病で飲む【抗うつ薬】を双極性障害患者が飲むと【躁転(うつ状態だったのが躁状態に急速に転じること)】することがあります。
なので、絶対に飲んじゃダメです。
だからうつ病に紛れている躁うつ病患者はいつまで経っても治らないんです。
また、先ほども説明した通り、心の病気と脳の病気では全くの別物なので、当然同じ薬を飲んではダメです。
双極性障害は【気分安定薬】という双極性障害専用の薬があります。
こちらは、躁とうつの気分の波を抑える薬なので、躁にも鬱にも効きます。この薬を治療中は基本的にはずっと飲むことになります。
症状によって、更に抗精神病薬などを組み合わせて飲んでいきます。
ここでは、その気分安定薬の種類について記述していきます。
まず、【気分安定薬】とはどういった薬なのかというと、
文字通り『気分を安定化させる』薬剤の総称で、双極性障害の躁とうつの波を小さくし、正常範囲内に収めることを目的に飲まれる薬です。
上の図の赤線を、青線に変えましょう、ということですね。
その効果には、躁状態に対する抗躁効果、うつ状態に対する抗うつ効果、躁病相・うつ病相の再発予防効果があり、これらすべての効果を有する薬剤が理想とされています。
現在日本で指定されているのは4つの薬です。
です。順番に見ていきましょう。
炭酸リチウム
気分安定薬の中で、最も古典的なものがこの【炭酸リチウム】です。
この薬は、【抗躁効果(躁状態を抑える効果)】【抗うつ効果(うつ状態を抑える効果)】そして【病相再発予防効果(躁病相やうつ病相が再び出現するのを抑える効果)】これら全てを併せ持つ唯一の気分安定薬とされています。
じゃあ、この薬でいいじゃん!って思いますよね?
実は、この薬が厄介な点は、リチウム中毒の危険性があるということです。
正しく服用することに加え、こまめに血中濃度を測らないといけません。
なので、私の主治医もこの薬を使うことには難色を示していました。
ただ、躁状態が酷い患者さんには、おそらく唯一の選択肢だと思います。
日本では、双極性障害の躁病相においてのみ適応が認められています。
また、気分安定化効果とは別に【自殺予防効果】もあることが示唆されています。
こういった点からも、双極性障害の治療薬として第一選択となっています。
ただし、妊娠の可能性がある場合や授乳中は、胎児に影響を与える可能性があるため、この薬は絶対に飲んではいけません。
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/gakkai/shiryo/data/bd_kaisetsu_ver9-20180730.pdf
17ページ
カルバマゼピン
カルバマゼピンは、躁病相に対しての治療効果と予防効果を持つとされています。
元々は抗てんかん薬であり、三叉神経痛の治療にも使用されます。
類似薬の炭酸リチウム、バルプロ酸ナトリウムと比べると、抗躁効果は強いけれど、病相再発予防効果のエビデンスは低いとされています。
躁状態への作用で比較すると、リチウムが第一選択と先ほど書きましたが、
リチウムは、抗躁効果が現れるまでに時間がかかるため、急ぎで躁状態を落ち着かせたい場合にはカルバマゼピンが推奨されるそうです。
こちらもリチウムと同様、服薬中は血中濃度測定が必要です。
主な副作用としては 眠気、めまい、ふらつき、倦怠感・疲労感、運動失調、脱力感、発疹、頭痛・頭重、立ち眩み、口渇 などがあります。
また、日本では妊娠中の投与には安全性が確立されていないため、治療の有益性が危険性を上回る場合にのみ服用すると書かれています。
妊娠を希望する場合や現在妊娠中の方は、よくお医者さんと相談しましょう。
バルプロ酸ナトリウム
混合状態(躁と鬱が同時に現れている状態)、ラピッドサイクラー(躁病相とうつ病相が1年の間に何度も現れる状態の患者)に有効という報告もありますが、うつ病相での有効性は明らかではありません。
ただ、再発予防効果は、躁・うつ両方の病相に効果があったとする報告書もあります。
また、焦燥感や攻撃性の軽減にも使用されます。
気分エピソード(躁状態やうつ状態が始まってから終わるまでを1つの【エピソード】と言います。)が10回以上の患者さんには、リチウムよりも躁状態に対して効果があるという指摘もあります。
また、リチウムやカルバマゼピンに比べて重篤な副作用が少ない点も使いやすいとされています。
ただし、妊娠の可能性がある場合や授乳中は、胎児に影響を与える可能性があるため、この薬は原則として飲んではいけません。
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/gakkai/shiryo/data/bd_kaisetsu_ver9-20180730.pdf
17ページ
ラモトリギン
ラモトリギンも、元々は抗てんかん薬として開発されたものでしたが、双極性障害への有効性が分かったため、保険適応が追加されたお薬です。
主に、気分エピソード(躁やうつの状態が現れること)の再発・再燃を抑制する効果があるとされています。
双極性障害の中でも、躁状態は軽躁で済んでいて軽躁状態もあっても少しだけ、ほとんどが鬱状態、という患者さんに投与されることが多いです。
私はこちらの薬を服用しています(^^)
ただし、ラモトリギンにも副作用があります。
皮膚障害の副作用が報告されており、100人に1人程度ですが重篤な発疹(スティーブンス・ジョンソン症候群)の報告があります。
ですので、服薬を始める際は、最小量を1日おきで2週間服用する、
それで副作用が出なければ、次に最小量を毎日で2週間服用、
それでも副作用がなければ、量を倍に増やして毎日を2週間、
それでも大丈夫ならさらに増やして・・・っていう順序で、一日に飲める最大量まで増やしていきます。
大変です(^^;
でもこれをやらないと、皮膚疾患が起きる可能性がありますので、慎重に投与します。
副作用が途中で出なければ、もうそのあとは飲み続けて大丈夫です。
また、この薬も、妊娠中や授乳中の方は、医師と相談のうえで、リスクよりも利益が上回る場合に飲むとされています。
以上が、気分安定薬についての説明でした。
このほかに抗精神病薬(主に統合失調症の治療に使う薬)を組み合わせたり、場合によっては抗うつ薬も使います。
抗うつ薬は単剤では飲みませんが、一時的にうつ状態が悪化している場合などスポット投与することで、それ以上の気分の落ち込みを防ぐ効果もあります。
全ての薬において言えることですが、よく医師と相談して飲みましょうってことですね(^^)
もし、お薬のことで疑問があればすぐ医師に質問してみるといいと思います。
それで答えてくれないような医師なら変えたほうがいいです(笑)
今回は、双極性障害で飲む薬をまとめてみました。
それぞれの薬にメリット・デメリットがありますので、それらを十分に検討されてお薬を選ばれるのがいいかと思います。
今飲んでいる薬に疑問がある場合には、ほかの薬も検討してみたり、あとはこういった精神科で処方される薬をまとめた本で勉強してみるのもいいかもしれません。
この本は私も持っていますが、おすすめです。
どの薬がどういった作用で働くのか?まで書かれているので、薬の理解に役立ちますし、いろんな薬が網羅されているので比較しやすいです。
自分が飲んでいる薬についてもっとよく調べたい人は、一冊持っておいて損はないと思います。
まぁ、患者があまり知恵をつけるのもよくないという考え方もあるかもしれませんが、自分のことですから、きちんと理解しようという姿勢は大事なんじゃないでしょうか?
それで、得た知識で医師に「なんでこの薬にしないんですか?<(`^´)>」とか突っかかっていかなければ大丈夫だと思います(^^;
また、途中にも記しましたが、こちらのPDFの17ページに、妊娠中の服薬の危険性を表でまとめたものが載っていますので、そちらも参考にしてみてください。
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/gakkai/shiryo/data/bd_kaisetsu_ver9-20180730.pdf